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サステナブルファッションは次の段階へ。アメリカで起きている「意識の転換」とは?

2025.12.01

循環リテールの最前線

【記事要約】

  • アメリカのサステナブルファッションメディア「WEEK/END」の記事によると、サステナブルファッションの焦点が、技術革新から「消費者心理の理解」へシフトしている。欧米ブランドは環境訴求ではなく、ポップカルチャーやアイデンティティに訴えるアプローチを展開中。

  • リセール市場の成功要因は価格ではなく、「中古=節約」から「ヴィンテージ=審美眼がある」への価値転換。DepopやVestiaire Collectiveなどのリセールプラットフォームが中古品をラグジュアリーな文脈で再定義した。

  • サステナブルな選択を行動として定着させるには、「環境に良い」ではなく「自分らしさを表す」というアイデンティティの領域にまで高めることが重要だと記事は指摘しており、日本でも若い世代を中心にこのような意識の変化が起こりつつある。


はじめに

アメリカのサステナブルファッションメディア「WEEK/END」が、11月8日に「Sustainable Fashion is FINALLY Talking About Consumer Behavior(サステナブルファッションがついに消費者行動を語り始めた)」という記事を公開しました。


このタイトルが象徴するように、いま欧米では「サステナビリティをどう語るか」が、大きな転換期を迎えています


日本でもフリマアプリの普及やブランド公式のリセールサービスによって、中古を選ぶことが日常になってきました。しかしアメリカでは、こうした行動変化が単なる節約や環境配慮にとどまらず、ポップカルチャーや自己表現を含む「文化の変化」として語られ始めています


今回の記事では、WEEK/ENDの記事をピックアップし、内容をご紹介。海外の最新トレンドを手軽にキャッチアップできる形でお届けします。


技術から心理へ、サステナビリティの次のフェーズ


これまでサステナブルファッション業界は、素材開発やサプライチェーンの改善といった技術的な解決策に注力してきました。しかし記事は、次のフロンティアは消費者の心理と行動の理解だと指摘しています。


実際、最近の欧米ブランドの動きを見ると、その変化は顕著です。ラグジュアリーリセールプラットフォームのVestiaire CollectiveはNetflixの人気ドラマ「エミリー、パリへ行く」の一シーンに登場。サステナビリティを軸とするアパレルブランドのReformationやEverlaneは人気俳優やアーティストを起用しキャンペーンを展開しました。eBayは世界的メディア企業Condé Nastと組んでリセールをファッションの最前線に押し出しました。


(「エミリー、パリへ行く」より、Vestiaire Collectiveの店舗でブランド品の真贋判定をするシーン)

これらに共通するのは、「環境にいいから買いましょう」という道徳的なメッセージではなく、ポップカルチャーやアイデンティティに訴えかけるアプローチ。サステナビリティを義務ではなく憧れに変えようとする潮流が見られます。


ヴィンテージ品がステータスシンボルに。リセール市場成功の本当の理由


記事では、成長を続けるリセール市場の成功要因について、リセールが主流になったのは単に安いからではなく、「中古=お金がない」というかつてのイメージが、「ヴィンテージ=審美眼がある」という価値観に転換したからだと指摘しています。


その転換を推し進めたのが、ebayから始まり、後に登場したDepopやVestiaire Collectiveといったリセールプラットフォームなどの、サステナビリティサービス。これらの会社が中古品を「信頼性」「社会性」「ラグジュアリー」という文脈で語り直したことで、リセールは文化として定着し、リセール品は「お金がない時に買うもの」から「センスの良さの証」となり、人々が憧れるものへと変貌しました。


重要なのは、サステナブルな選択がアイデンティティの一部となること


リセールがここまで広がったのは、消費者の捉え方が変わったからです。もし同じように、「サステナブルであること」自体が憧れの対象になれば、そのインパクトは計り知れません。


ただし記事は、それを実現するためにはサステナブルな選択が無理なくできる状態をつくることが不可欠だと指摘します。実際に、数多くの調査で消費者が「サステナブルな商品に高いお金を払ってもいい」と答える一方で、実際の行動は伴っていないという「態度と行動のギャップ」が指摘されています。


どれだけ革新的な素材や技術が生まれても、消費者が実際に買わなければ意味がありません。だからこそ、人々が無理せず、社会的にも認められる形でサステナブルな選択ができる仕組みづくりが求められています。そのためには、ファッションがアイデンティティを表すものであるように、サステナブルな選択肢を取ること自体がアイデンティティの一部になることが重要だ、と記事は締めくくります。


まとめ


WEEK/ENDの記事が示すのは、サステナビリティが新たな転換点を迎えているという事実です。アメリカでは、リセールが「環境のために我慢する」のではなく、「自分の価値観やスタイルを表現する手段」として位置づけられ始めています。


日本でもリセール文化が定着しつつある今、その変化の兆しは見え始めています。古着フリマアプリdigdigがZ世代から熱狂的な支持を集めているのは、まさに「サステナブルだから」ではなく「かっこいいから」「自分らしいスタイルが見つかるから」という理由です。リセール、ひいてはサステナビリティへの意識が、若い世代を中心に変わりつつあります


アメリカから学ぶとすれば、次に日本においてアパレルブランドやファッション業界に問われるのは、「いかにサステナビリティを文化のメインストリームと捉え、消費者の行動の変容を生み出せるか」です。ただ「安いから」「環境にいいから」ではなく、「おしゃれだから」「憧れるから」リセールする——そんなストーリーが、これからのサステナブルファッションを動かすのだということを、WEEK/ENDの記事は示しています。

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