Liberontとは

循環型社会へ向けた世界の最新の潮流:日本の取り組みとLiberontの構想編

2025.08.06

循環する未来

[記事要約]

  • 日本における循環型社会への着実な歩み:日本における取り組みの特徴は、経産省と環境省を軸にした、官民協調型の取り組み。2020年に環境活動から経済活動へと主眼をシフトした日本では、現在は競争環境の整備とEUの規制対応に注力している段階であり、強引にでも転換を進める欧米とは戦略的な違いがある。


  • 経産省の最新の動向:経産省では、産官学の連携パートナーシップ発足による議論の活発化、投資促進策の実施、規範整備など、企業の自主的な参加を促す形で競争環境の整備を進める。企業にとっては、制度設計の段階から社会の構築に携われる好機である。


  • 日本の未来へ向けたLiberontの問い: Liberontは、日本が将来「超資源循環国」として世界をリードする未来を見据え、消費者も巻き込んだ新たな社会構造の構築に挑む。日本独自の循環型社会を創るムーブメントを、アパレルや雑貨など身近な領域での変革を通して率いていく。


はじめに

世界ではいま、循環型社会の実現に向けた取り組みが加速しています。


前回の記事では、その潮流の中でも特に先進的な欧米の事例を取り上げ、「そもそも循環型社会とは何か?」という問いから、制度や企業の実装レベルに至るまでをご紹介しました。


本記事では視点を日本に移し、官民の協調によって少しずつ進化する国内の動きを紐解いていきます。


そしてその先にある、Liberontが見据える「日本だからこそ実現できる循環社会」の姿についてもご紹介します。いま私たちが社会に投げかけている問いとともに、読者の皆さんとともにその輪郭を描いていければと思います。


産官学の共創により、着実な歩みを進める日本


日本における循環型社会への取り組みは、政府が主導し民間の声も取り入れる形で、環境省と経産省が中心となって進めています


まず押さえておくべき日本の環境政策の基礎が、2000年の「循環型社会形成推進基本法」です。資源のリユース、リデュース、リサイクルの3Rを基本原則としており、これに基づいて、個別素材・製品ごとの廃棄物の減量と資源の有効活用を促すリサイクル法が整備されていきました。エアコンやテレビ、ゲーム機などの家電全般を回収・リサイクルする「家電リサイクル法」と「小型家電リサイクル法」や、プラスチックごみの減量化や回収を促進する「プラスチック資源循環促進法」、家庭ごみの容器包装を対象とした「容器包装リサイクル法」などが例としてあげられます。リサイクル法の効果もあり、日本の循環利用率は上昇しており、特にペットボトルのリサイクル率は85%と、50%を下回る欧米諸国と比べて先進国でもトップクラスです。


2020年には、経産省が「循環経済ビジョン2020」を発表し、「環境活動としての3R」から「経済活動としての循環経済」への転換を図るための方向性を示しました。現在は、環境活動を引き続き進める環境省と、経済活動を推進する経産省の両省が日本の取り組みを率いています。


環境省の取り組み:資源循環の法整備と、地域主体の循環経済圏構築


環境省は、3Rと資源再生を中心とした政策作りや、環境保護も含めた地域における循環経済圏創生への取り組みを主に進めています。法整備に関しては、個別素材の資源循環促進の法律の策定に加え、2024年には環境に配慮した繊維製品設計のガイドラインを策定しました。環境負荷の少ない原材料の使用や廃棄物の抑制など、繊維製品のライフサイクルの各段階に応じた環境配慮設計11項目とその評価基準や評価方法を設定しています。EUの強制的な規制とは違い、あくまでもガイドラインとして事業者の主体的な活用を促すものです。


また地域においては、廃棄物処理施設の新たな活用方法を模索し、富山県で焼却施設の熱と電気を利用して野菜を栽培する取り組みを行ったり、地域資源を活用してローカルSDGs事業を創出するための「地域循環共生圏」の構築を支援したりしています。


経産省の取り組み:競争環境の整備と資金支援


経産省はサーキュラーエコノミーへの転換に向けて、産官学の連携の推進や投資など、競争環境の整備に力を入れています


2023年には、産官学連携のパートナーシップ「サーキュラーパートナーズ」を立ち上げました。国、大学、産業分野から620を超える会員が参画し、サーキュラーエコノミーに取り組む関係団体の有機的な連携を促進しています。


「サーキュラーパートナーズ」の主な取り組みは3つです。1つ目が、「ビジョン・ロードマップ検討ワーキンググループ」の立ち上げです。2030年、2050年を見据えた日本のサーキュラーエコノミー実現に向けたビジョンや、中長期のロードマップを策定しています。


2つ目は、「サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム」の立ち上げです。製品と素材の情報や循環の実態を可視化するプラットフォームを設立し、トレーサビリティを確保するほか、国が基準を定めて多数なプレイヤーの情報を標準化・連携する狙いです。現在、要件設定が進んでいます。


3つ目は、「地域循環モデル構築ワーキンググループ」の立ち上げと議論の実施です。自治体におけるサーキュラーエコノミーの取り組みを加速し、地域の経済圏の特性に応じた「地域循環モデル」をつくることを目指しており、定期的にワークショップを開催中です。


パートナーシップの次に経産省が取り組んでいる領域の一つが、投資促進策の実施です。今後3年間で100億円規模、10年で2兆円を資源循環分野に投入する計画です。2024-2025年の最新年度では、風力発電等のサプライチェーン構築の支援、グリーン・トランスフォーメーション分野のディープテック・スタートアップの助成など、様々な分野での投資促進事業を進めてきました。サーキュラーパートナーズの枠組みも活用し、「産官学連携による自律型資源循環システム強靱化促進事業」と題した、資源循環に関わる研究開発から実証・実装までを全面的にサポートする会員に対象を限定した投資支援も行なっています。


経産省が取り組む3つ目の領域が、動静脈連携を加速させる制度整備です。製品の「設計・製造・販売・利用」に関わる「動脈産業」では再生材をより多く活用し、「回収し再生・再利用」する「静脈産業」ではより効率的な回収を強化することを目指して、この二つの領域の事業者を連携させるのが狙いです。これまでは回収段階の3Rに焦点が当てられていましたが、現在、製品のライフサイクル全体を視野に入れた制度づくりやルールの見直しを検討中です。


日本における取り組みの特徴


日本における循環型社会への取り組みの特徴は、法制度の整備を軸に、産官学および政府と地方が連携した着実な歩みです。経産省も、強制力のある規制的手法よりも、企業の自発的な取り組みを促す規範整備を重視しており、企業にとっては、転換期にある今が、政府と連携して循環型の取り組みを推進できる好機となっています。「サーキュラーパートナーズ」への参加や、助成金を活用した新規ビジネスの立ち上げなど、様々なアクションが可能です。


一方で、国際的な視点では、先進的な取り組みが進む欧州の基準に取り残されないよう、対応が急務となっています。EUの新たな環境規制が次々と実施段階に入り、米国企業も積極的な取り組みを加速させる中、循環性への対応は今後ますます先進国市場の参加条件という要素を強めていくと思われます。


循環型社会の今後と、Liberontの見据える未来


全世界を見渡すと、EUの欧州委員会による規制主導の包括的モデル、米国の企業主導の市場牽引型モデル、日本の産官学連携の協調推進型モデルと、各国アプローチの違いがあるものの、世界的な潮流は一致しており、循環型社会への転換が必須であることが浮かび上がります。


特に日本は法的枠組みを整備してきましたが、今後はビジネスドリブンな循環経済への転換と国際競争力強化が急務となっています。


この変化が加速する時代を踏まえ、私たちLiberontは、日本における資源循環のあるべき姿とそこに眠れる可能性を根本から問い直し、新しい資源循環社会を形成する中核にいたいと考えています。


私たちが投げかけるのは、以下のような問いです。今後、日本が現在のように他国を追いかける形ではなく、「超資源循環国」として、世界に対して新たなリーダーシップを発揮する未来は描けないだろうか?それは、これまで世界でも十分に取り組まれてこなかった新しいアプローチ、そして、日本だからこそ実現し得る、独自の差別化に挑むことではないか?


また本記事では、資源循環を推進する政治や企業の取り組みを中心にお伝えしてきました。それらの動きが主体となって、これまで消費者の生活を形作ってきたからです。しかし、今後は、企業同士の連携にとどまらず、消費者を中心に据え、生活者自身が参加する資源循環の仕組みを築けないだろうか?


その中で、私たちの役割はどうなるのか。いま注目される官民連携の潮流の中で、これまで語られてこなかったアパレルや雑貨といった領域において、私たち事業者こそが新たなムーブメントの火種となり、社会にインパクトをもたらす存在になれるのではないか?


Liberontでは、前人未到の領域への到達を目指す「ムーンショット」、すなわち月に届くような事業を構想しています。世界全体で資源循環社会への転換が進む中、私たちも、自らが投げかけた問いと真摯に向き合いながら、日々の事業に取り組んでいます。


参考:

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