Liberontとは

世界で広がる資源循環の波:Reflaunt編

2025.07.01

循環リテールの最前線

[記事要約]

・Reflauntが支える高級ブランドの公式リセール: Reflauntは、ブランドが一度販売した商品を顧客から集め、外部のリセールプラットフォーム(eBayなど)で販売するまでをサポート。消費者は高品質な商品を選び、購入後も資産として価値を循環させる体験ができる。ブランドは顧客との関係を深めつつ、二次流通を可視化・管理してブランド価値を守る。


・パートナーブランドにとっての意義: 公式なリセールの仕組みを持つことで、顧客情報の獲得、再購入の促進、売上増加、そして自社商品の二次流通のコントロールなどのベネフィットが見込める。


・欧州と日本で分かれる高級ブランドリセール。市場ごとの展開の鍵: 欧州では慎重ながらも着実に進む一方、日本においてはただの中古販売ではなく、「公式チャネルからの出品」や「正規のクレジット還元」などブランド体験の延長としての安心感が普及の鍵となりうる。



循環型モデルへの転換を支援するサービスの台頭

今、世界的な循環社会への機運が高まる中で、多くのブランドが自社商品の二次流通に関わる取り組みを始めています。その実現を支えるのが、ブランドの公式リセールの仕組み構築や実施を支援する循環サービスです。

今回の記事では、以前紹介した6つの循環サービスのアーキタイプの中から、マネージド・マーケットプレイス型の代表例として「Reflaunt(リーフロウント)」を取り上げます

 

マネージド・マーケットプレイスとは、ブランドの外部パートナーとして、自社商品の公認リセールの集品から出品までを担うBtoBモデルです。Reflauntは2018年にシンガポールで設立され、ラグジュアリーブランドを主な対象として欧州を中心に拡大しています。

 

ブランドは、公式リセールの仕組みを持つことで、顧客情報の獲得や再購入の促進、売上増加、そして自社商品の二次流通のコントロールなど、さまざまなメリットが期待できます


Reflauntのサービスの仕組み


Reflauntは、高級ブランド向けのリセール支援サービスです。ブランドが一度販売した商品を顧客から集め、外部のリセールプラットフォーム(eBayなど)で販売するまでをサポートしています。そのため、ブランドは自力で中古販売の仕組みを構築しなくても、Reflauntを使ってすぐにリセール事業を始めることができます。

 

ブランドは、これまで把握しきれなかった顧客ごとの個別のリセールの流れを、公式リセールとして束ねてコントロールできるようになります。また、いつ・どのタイミングで・どの顧客が商品をリセールに出したか、いくらで販売できたか、などのデータが見えるようになり、二次流通の透明性が高まります

 

裏側のリセール部分はReflauntが担い、商品は外部の二次流通市場に回すため、仕組み構築は不要です。さらに、過去に購入した顧客だけを対象とすることで、偽物の流通を防ぎつつ、ブランド価値を守る設計になっています。

 

消費者は「買った商品の公式リセール」と「ストアクレジットの付与による次の買い物」までをつなげた循環型の新しい購買体験が可能になります。

 

Reflauntと提携している代表的なブランドはBalenciagaやNet-A-Porterなどのラグジュアリーブランドです。以前から非公式に活発だった高級ブランド品の中古取引を、ブランドの管理下で価値を守りつつ二次流通市場に送り出す支援をしています。

 

Reflauntが提携しているリセールプラットフォームは30以上に上り、欧州・中東・アジアなど世界中で出品が可能です。すでに5万点以上の商品のリセールを支援しており、グローバルに拡大しています。


公式リセールの提供が消費者とブランドにもたらすメリット


Reflauntが実現する公式なリセールは、ユーザーにとっては簡単に出品でき、さらにストアクレジットとして次の買い物につながるという新たな購買体験を生み出しています。また過去に購入した商品がリセール対象となることで、家のモノが資産に変わります。

 

ブランドにとっても、顧客情報の獲得だけでなく、再購入の促進や売上増加、さらにそれまではブラックボックスであった二次流通のデータを把握できるメリットがあります。

 

この流れは、単なる利便化・事業強化だけでなく、買い物の時点で、リセールする価値がある高品質な商品を選ぶという意識を育てています。ブランドは高品質な商品を提供し、消費者は買った商品を循環の流れに乗せて価値を引き継ぐという、双方が一体となってモノを循環させる文化を作っているのです。


Reflaunt CEOのステファニー・クレスピン氏は、こう語ります。

 

「ブランド主導のリセールは、単に製品に「第2の人生」を与えることにとどまりません。これは、ファッションアイテムの価値を再定義する取り組みでもあります。ファストファッションの台頭により、私たちはファッションを「使い捨て」として捉えるようになってしまいました。しかし、リセール市場の成長は、品質の高いアイテムは時間が経っても価値を保ち、何度か着用した後でも適正な価格で再販できることを示しています

 

そのため、リセール市場は、製品の耐久性に投資し、一次流通を超えても欲望の対象となり続けるブランドに恩恵をもたらします。そしてこのことは、消費者の購買行動や一次流通における選択の仕方にも影響を与えるのです。」(参考:Seedblink

 

実証事例:ラグジュアリーブランド「Balenciaga」との提携


Reflaunt代表的なパートナーとして挙げられるのが、ラグジュアリーブランドの「Balenciaga」です。2022年当時、高価格帯ブランドの中で最も高い再販需要伸長(41%)を記録しており、またGucciやAlexander McQueenなど他の高級ブランドのリセール参入にも後押しされて、Reflauntと提携したリセールをローンチしました。顧客にはリセールの報酬として、現金に20%上乗せしたストアクレジットを提供しています。この取り組みにより、Balenciagaには20億ドル相当のリセール在庫価値が生まれました。(参考:Seedblink

 

なお、他の高級ブランドでも、Stella McKartneyがThe RealRealと独占連携するなど、公式リセールの形はブランドによって多様化しています。今後どのような形でリセールが進むのか、注視していきたいところです。


ブランド価値を守りつつ循環を実現:高級ブランドによるリセールの動向

Reflauntは世界中に展開を広げ、提携リセールプラットフォームを通じて5億人以上の消費者にリーチしています。

 

しかし、Balenciaga以降、同価格帯の新たなブランドパートナーは増えておらず、欧米の高級ブランド全体においても、公式リセールの拡大は進みつつあるものの、まだ限定的です。

 

この背景として考えられるのが、高級ブランド独自の統一した販路へのこだわりです。たとえば前述の「Gucci」や「Alexander McQueen」は「Vestiaire Collective」という高級ブランドに特化したフリマ型リセールプラットフォームと独占提携しており、ユーザーが出品した商品に対してプロが真贋鑑定を行い、「ブランド公式」タグを付けて販売しています。また「Stella McCartney」は「The RealReal」という委託販売形式のリセールサイトと独占提携しており、ユーザーが送付した製品をThe RealRealが預かり、プロの真贋鑑定を経て販売する仕組みをとっています。

 

そもそもリセールに慎重なラグジュアリーブランドも多く、その背景には、販路が増えることでブランドの世界観や価値が希釈されることへの懸念があります。Reflauntは複数チャネルへの同時出品を強みとしていますが、販路拡大と引き換えにブランド価値の統制が懸念となり、拡大の壁となっている可能性があります。

 

リセールに慎重な高級ブランドがそれでも二次流通に取り組むのは、欧米においては、消費者意識もリセールを後押ししているからです。アメリカやヨーロッパでは「循環への取り組みをしていない=サステナビリティへの意識が低い」と見られる傾向があり、手を打たないままブランド価値が低減するリスクの方が高いという判断につながっています。また、ファッションの循環を前向きに捉える文化が根付いており、「Pre-loved(大切に使われた)」という表現も普及しています。


日本でReflauntのような仕組みが普及するには?


欧米では高級ブランドのリセールが慎重ながら進む一方で、日本における高級ブランド品のリセールには、まだハードルがあります。その背景として、「高級=新品」という価値観や、コメ兵や大黒屋などが牽引するプロによる鑑定の普及、そしてフリマアプリでは保証されないブランド品ならではの真贋判定の重要さが挙げられます。


「高級品はプロに任せるもの」という意識が強い日本でも高級ブランドがリセールを進めるには、ブランド公式のチャネルから出品できる安心感や、ストアクレジットで次の買い物につながる仕組みによる「公式感」を打ち出すことが鍵となります。

 

高級ブランドにとっても、消費者にとっても、リセールを単なる中古売買ではなく、「ブランド体験をアップデートするツール」として位置づけることができれば、普及の可能性は一気に高まるのではないでしょうか。

 

そして、そのようなブランド体験の一部としてリセールを取り入れる際に役立つのが、Reflauntや、前回の記事で紹介したTroveのようなResale-as-a-Serviceモデルです。これらのサービスを使えば、自社で二次流通をどれだけコントロールしたいかに応じて、ブランド独自のリセールプログラムを立ち上げられます

 

Troveなら、自社ブランドの名のもとで下取りから再販売までを完全に管理するモデルとなりますが、Reflauntのようなマネージド・マーケットプレイス型であれば、既存のリセール市場とつなぐだけで済むので、より気軽に、小さく始めることができます。

 

循環社会への転換が世界全体で進む中で、モノを売って終わりではなく、どう次の持ち主に引き継ぐかを見届けるまでがブランドの責任となり、また新しい差別化ポイントにもなっていきます。

 

そのための一手として、Reflauntのような循環サービスが新たな解決策をブランドに提供しています。

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