Liberontとは

Why Now – 資源循環の転換点が「今」である理由

2025.06.02

循環する未来

【記事要約】

  • 社会構造の転換点: 大量生産・大量消費の限界が明らかになる中、消費者と企業の双方において、モノの循環を前提とした新しい仕組みの必要性が高まっている


  • 消費者を取り巻く潮流: フリマアプリや公式リユースの普及により、モノは「使い捨てるもの」から「価値を巡らせるもの」へと認識が変化。リセールを見越した購買行動が一般化する一方で、価格の不確実性、出品の手間、品質への不信感といった障壁が依然として存在する


  • 企業の挑戦 - 広がる二次流通、立ちはだかる壁: 二次流通市場の拡大と参入への機運が高まる一方で、そこには、新品販売とのカニバリの懸念、ブランド価値への影響、収益モデルの設計など、複雑な課題が立ちはだかっている


  • 買うことが社会貢献になる時代へ: Liberontは、モノを買う行為そのものを、循環の起点へと再設計することで、消費者も企業も無理なく循環社会の一員となれる世界を目指している


消費社会の転換点で生まれた、新たな兆し

モノの大量消費が当然となった今の社会で、Liberontが目指すのは、新しい循環システムの社会実装である——


前回の記事では、私たちは今、大量消費・大量生産社会の転換期に立っていること、そして、地球の資源が限界を迎える前に「モノが眠らず巡る」循環システムを実装しようとしていることをお伝えしました。


モノがただ生まれ、使われ、捨てられるのではなく、大事にしてくれる人々の手を渡って自然に巡ることを前提としたエコシステムが、これからの社会の鍵になると私たちは考えています。


でも、なぜ今が転換点なのか?なぜ今、この取り組みを始めなければならないのか?


その問いに対する私たちの答えは、社会全体の「モノの流れ」が、確実に循環システムを求める方向へと動き始めているから、という実感にあります。実際のところ、循環社会へと向かう新しい動きは、日々の暮らしの中にも、企業活動の中にも着実に現れ始めています。


この記事では、そうした変化の兆しをたどりながら、なぜ今このタイミングで、循環の仕組みを社会に組み込む必要があるのか、その理由をひもといていきます。


消費者の暮らしに起きた変化。二次流通市場の発展で変わる買い物の形

私たちの暮らしの中で今起きている最も大きな変化のひとつは、二次流通市場の発展と、そこに起点する買い物のあり方です。


以前は、欲しいと思ったモノを買って、使わなくなったらしまい込むか、いずれ処分するという、買って終わりのサイクルが常態でした。ファストファッションの広がりはその象徴的な例で、ワンシーズン限りで着なくなる衣類が大量に市場を巡り、やがて廃棄へと向かっていきました。


しかし、2013年にメルカリが登場したことを皮切りとしたフリマアプリの普及、そして二次流通市場の発展は、私たちの考え方を大きく変えました。「使い終わったら売る」という選択肢が一般化し、メルカリやラクマなどを通じて、自宅にある不要品を誰かの手に渡すという行動が日常の一部になってきました。


このような状況の中で、消費者の中では、リセールを前提に買うという行動が当たり前になりつつあります。実際に、商品購入時にリセールバリューを考えたことがある人は7割以上、20代の2人に1人は、リセールバリューが高ければ背伸びしてでも購入を考えるという調査結果がでており(株式会社コメ兵ホールディングス調べ)、リセールありきの買い物は今後どんどん広がっていくと推測されます。買う時点で、モノは消費する対象ではなく、手元に置いていずれリセールする資産として見なされるようになっているのです。



成熟するほど浮かび上がる、二次流通の壁

二次流通の一般化が広がる一方で、私たちは新たな壁にも直面しています。


リセールを前提に買い物をしようとすると、現在の仕組みでは、購入から手放すまでの各段階において、まだ解消されていない課題や満たされていないニーズが残っています。


買う時点なら、「本当に売れるのか?」「売れるとしていくらの値がつくのか?」という不確実性がつきまといます。たとえば、人気ブランドのバッグを購入しようとしても、数ヶ月後に同じ価格帯で売れるかは保証されていません。モデルチェンジやトレンドの変化によって相場が大きく変わることもあり、プロならまだしも、一般消費者がリセール価値を見極めるのは簡単ではありません。


使い終わった後のフェーズでは、「出品するのが面倒そう」という心理的・時間的コストが立ちはだかります。商品説明を考え、写真を撮り、値段をつけ、買い手とのやり取りをする。場合によっては、リサイクルショップに持っていく——忙しい日常の中でこれらをこなすのは負担に感じる人も多く、結果として「そのうち売ろう」と思っていたモノがクローゼットの奥に眠り続けてしまうのです。


リセール品を買う際にも「本当に本物なのか?」という信頼性の問題が残ります。近年は「スーパーコピー」と呼ばれる精巧な偽造品が市場に多く出回っており、とくにブランドバッグやスニーカーなどの人気ジャンルでは、見分けがつかないレベルの模造品が高値で取引されることすらあります。こうした事例が積み重なることで、買い手側の不信感は強まり、「リセール品は怖いからやっぱり新品を買おう」という心理が働いてしまうのです。


リセール市場が成長しながらも、個人がすべての出品・取引を担う現在のモデルでは、負荷やリスクもまた個人の責任となります。結果として、「売るつもりだったけれど、やっぱりやめた」「タイミングを逃した」といった理由で、モノが再び家の中に眠る事態が生まれているのです。


安心して資産としてのモノを手に入れるには、リセールにまつわる情報の信頼性の担保や、無理せずリセールができる仕組みづくりなどの課題が浮かび上がっています。


売るだけでは成長できない時代へ。企業が抱えるジレンマと挑戦

これまでの当たり前が新しい常識に取って変わるような変化は、モノを生み出す側である企業の世界にも起きています。


かつては、大量に生産して大量に売ることが企業の成長モデルでした。社会全体が右肩上がりに成長していた時代には、このスタイルが有効だったのです。しかし今、限りある資源と成熟した市場環境の中で、「生産=成長」という前提は揺らぎつつあります。


経済成長のみを追求し続ける価値観を問い直し、持続可能性を重視する脱成長社会へと向かう潮流の中で、企業もモノの一生に責任を持つ姿勢が求められるようになってきました。欧州で提唱され、海外主導で始まったこの流れに沿って、一部の企業は、廃棄や回収、再利用といった二次流通のシステムを、自社の設計に組み込みはじめています。


たとえば家具のIKEAは、下取りと再販を組み合わせたリユース事業を積極的に展開し、LVMHはラグジュアリー領域での公式リセール参入を発表しました。資産価値の再定義と透明性の確保に本腰を入れ始めています。


とはいえ、ここまで積極的に取り組みを進める企業はまだ一部。実際に二次流通を組み込むためには、企業にとってまだ多くのジレンマが存在します。


企業の二次流通への取り組みを阻む壁

二次流通に取り組もうとする企業にとって、まず最初の不安要素となるのが、既存事業への影響です。懸念としてよく挙げられるのは、新品販売とのカニバリゼーションです。たとえばアパレル業界では、セール時期やアウトレット施策と競合する可能性があるため、リユース商品を公式に売ることが売上低下につながるのではと慎重になるケースは少なくありません。


またリユース品を扱うことで、ブランドとしての世界観や高品質な印象にどのような影響があるかという点も、企業にとっては検討が難しいポイントです。ブランドの世界観を損なわず、どのように「循環」をストーリーテリングの一部として取り入れるか。リユース品は、ただ手に入れやすい価格であるだけでなく、一度使われ、価値が受け継がれた商品であるという側面をどう打ち出せるか、頭を悩ませる企業は多いです。


さらに、二次流通へ参入するなら、収益性の確保も求められます。これまで一次流通に特化していた企業にとって、中古品の状態管理・価格評価・流通経路の設計などはまったく新しいノウハウが求められます。自社で全ての工程を担うのか、それとも外部のプラットフォームと連携するのか。その選択によっても収益構造や事業の持続性が大きく変わるため、慎重な見極めが求められます。


こうした選択肢の中から、自社にとって最適なバランスを見つけるのは簡単ではなく、いまだに多くの企業が明確な答えを見いだせていないのが現状です。



消費者と企業、それぞれの不安を超えて

大量生産・大量消費の限界と、それに呼応するかたちで拡大する二次流通市場。この変化の波が広がる中で、日々の暮らしと生産の両面で大きな転換が進んでいます。


もちろん、そこには多くの不安や、解決すべき課題があります。


でも、だからこそ今、誰もが安心して循環に参加し、モノが自然に巡る仕組みが必要です。


消費者は、モノの価値を最後まで活かす前提で選び、企業は、モノの一生を責任を持って見届ける。モノを買うという行為を、消費の終着点ではなく、循環のスタート地点に変えていく。


私たちは、そんな循環を前提とした購買体験を、社会のスタンダードにしていきたいと考えています。


その先にあるのは、買うことが社会貢献になる未来です。そのために、私たちは今、新しい循環の仕組みの実装に取り組んでいます。


次回は、その構想をどうサービスとして届けているのかをご紹介します。

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